墓じまいを考える前に知っておきたい「墓守は必ず一人」
〜代が変わるたびに起こるトラブルを防ぐために〜
行政書士室井実事務所
お墓は、家族の絆を象徴する大切な場所です。先祖を偲び、感謝の気持ちを伝える場所として、多くの方が代々受け継いできました。
しかし近年では、少子高齢化や核家族化の進行により、「お墓を守る人がいない」「管理が大変」という声が増えています。特に「墓じまい」を検討するご家族の中で多いのが、「誰が墓守を続けるのか」という問題です。
今回は、「墓守は必ず一人である」という基本的な仕組みと、管理費や親族間のトラブルを防ぐためのアドバイスを、行政書士の立場から解説いたします。
■ 「墓守」は法律上、必ず一人
お墓には、名義人(使用者)が存在します。墓地や霊園は土地の所有権を持つのではなく、「使用権」を借りてお墓を建てる仕組みです。
つまり、墓地の契約者=お墓の「使用者(墓守)」であり、この使用者は必ず一人でなければなりません。
複数人で「共同名義」にすることはできません。なぜなら、管理者(お寺や霊園)が、誰に連絡すればいいのか、誰が責任を負うのか判断できなくなるからです。
使用者には、以下のような義務と権利があります。
- お墓の管理費を支払う義務
- 墓石や外柵の維持・修繕の責任
- 納骨・改葬などの手続きを行う権限
- お墓を承継させる権利
つまり、「お墓の主」としての立場を持つ人が墓守であり、その責任はとても重いものです。
■ 管理費・修繕費の負担がトラブルの火種に
お墓には、毎年「管理費」や「護持会費」といった維持費が必要です。
金額は霊園やお寺によって異なりますが、数千円から数万円程度が一般的です。
この費用は墓守が支払う義務を負います。
しかし、代が変わり、親族が増えていくと、「誰が払うのか」「誰のために払うのか」で揉めるケースが非常に多くなります。
たとえば、
- 兄弟姉妹の間で負担をめぐって口論になる
- 支払いを滞らせてお寺から督促が届く
- 管理費の未納で墓所の使用権を失う
といった事例は、決して珍しくありません。
また、遠方に住む家族が増えると、法要や清掃のたびに調整が必要となり、次第にお墓が“負担”と感じられるようになることもあります。
■ 代が変わると増える「親族間の争い」
墓守の承継は、遺産相続とは少し違う仕組みです。
お墓や仏壇などは「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、民法上、遺産分割の対象にはなりません。
つまり、現金や土地のように分け合うことはできず、誰か一人が承継者になるのが原則です。
この「一人だけが継ぐ」という制度が、親族間の争いの原因になりやすいのです。
- 「長男が当然に継ぐべきだ」と考える人
- 「自分も同じ家の子どもだから権利がある」と主張する人
- 「遠方に住んでいて管理できない」と辞退する人
家族の中で考え方が異なり、結果として話し合いが長引くこともあります。
特に、名義変更をしないまま墓守が亡くなってしまうと、誰が次の使用者か分からなくなり、改葬(お墓の引っ越し)や墓じまいの手続きが進まなくなることもあります。
■ トラブルを防ぐためのアドバイス
墓守やお墓の承継問題は、**「早めの話し合い」と「明確な意思表示」**が何より大切です。
以下の3つのステップを意識しておくとよいでしょう。
- 現状の確認
お墓の名義人が誰なのか、管理費は誰が払っているのかをまず確認します。
名義が祖父母や亡くなった親のままになっているケースも多く見られます。 - 承継者を決めておく
次にお墓を誰が守るのか、家族で話し合いましょう。
遠方や高齢で難しい場合は、墓じまいを検討するのも選択肢のひとつです。 - 文書で残す
口約束ではなく、遺言書や覚書として残すことが大切です。
行政書士に依頼すれば、法的に有効な書面として作成できます。
■ 墓じまいという選択も「責任ある決断」
「墓をしまうなんて…」と罪悪感を抱く方も多いですが、墓じまいは次の世代に負担を残さないための思いやりある行動でもあります。
墓石を撤去してご遺骨を永代供養や納骨堂に移すことで、後継者がいなくても安心して供養を続けることができます。
行政書士室井実事務所では、墓じまいに関する書類作成から、改葬許可申請、お寺や霊園との調整まで、トータルでサポートいたします。
また、家族間の意見調整や遺言書の作成支援も行い、「もめないお墓の終い方」をご提案いたします。
■ 想いをつなぎ、安心を残すために
お墓を守るということは、先祖を敬う気持ちを次の世代に伝えることでもあります。
しかし、その形は時代とともに変わっていくものです。
「これから誰が墓を守るのか」
「自分の代で終わらせるのか」
その答えは人それぞれですが、**きちんと考え、準備しておくことが“争いを防ぐ最善の方法”**です。
墓じまい・承継・遺言のことなら、どうぞ行政書士室井実事務所にご相談ください。
ご家族の想いを大切にしながら、心配を安心に変えるお手伝いをいたします。